痴漢の無罪主張

1 痴漢冤罪は実際にある

痴漢事件では、被疑者本人が事実を否認していても、被害者と称する女性の供述を頼りに、被疑者の逮捕・勾留、そして起訴されることがあります。特に、電車内痴漢など被害者が被疑者を確保しているような場合には、警察の捜査開始段階ですでに「現行犯人」(刑事訴訟法第212条)らしい人物の身柄が確保されていることになります。たとえ被疑者が、駅員などの第三者を交えて冷静に冤罪を主張しようと駅員室に行ったとしても、それは被疑者に有利に評価されません。むしろ、駅員室に行くと、マニュアル通りに被疑者を警察に引き渡すことがほとんどですので、そのまま留置場へ直行することになりかねません。

痴漢の容疑をかけられた男性は、自身が潔白、無実であることを証明するのは相当困難な状況といえます。事実を否認すれば身柄拘束が継続しますし、起訴される可能性も高まります。そして、裁判で無実を争うことになると長い時間がかかるため、警察から「事実を認めれば、罰金で済む。」という誘導にのってしまい、嘘の自白をしてしまうことも実際にはあります。


2 痴漢冤罪で逮捕されたら

痴漢事件の容疑をかけられ、事実を否認し、無実を主張すると、下記のような不利益が伴います。

 

・否認することで身柄拘束が長期化します。

痴漢行為を否認している場合には、罪証隠滅・逃亡のおそれがあるとされ、身柄拘束が長期化します。

 

・会社、学校に行くことができません。

身柄拘束が継続されれば、当然会社や学校に行くことはできません。また、痴漢という犯罪の性質上、逮捕されたという事実だけで社会的な信用を損ないます。

 

・厳しい取調べが続きます。

取調べを行う捜査官は、取調べのプロです。そのため、無実の被疑者が痴漢行為を否認し続けることは、困難が予想されます。もっとも、捜査官は、無実の被疑者を取調べても、当然、被疑者は事件をしていないため思うような供述を獲得できません。その一方で、捜査官は、捜査の過程で被害者から被害状況などの詳細な話を聞いています。そこで、捜査官は、被害者の供述に基づくストーリーに沿った事件内容の供述を、無実の被疑者から獲得しようとします。取調べは、逮捕から起訴されるまでの最長23日間行われます。特に逮捕直後の取調べでは、無実の被疑者は、自分に不利な供述をしてしまうリスクが高いです。

 

・裁判で無実を証明するのは、過酷です。

裁判では、検察官や被害者の供述を信用される傾向にあります。また、検察官は、無実の被疑者にとって有利な証拠を積極的に開示しません。


3 すぐに弁護士に相談を

痴漢冤罪の容疑をかけられてしまったら、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。本人が逮捕されている場合は、そのご家族がすぐに弁護士に相談をしてください。警察から本人を逮捕した旨の連絡が入り次第、なるべく早い段階で相談しましょう。

そして、できることなら刑事事件に強い弁護士に相談されることをおすすめします。刑事事件は、厳格な時間制限のもとで弁護活動をしなければなりません。ですから、刑事事件に携わる弁護士にも迅速な弁護活動が要求されます。刑事事件に強い弁護士であれば、迅速な弁護活動が期待でき、依頼者の利益につながります。